星の数ほど

星の数ほど

語彙力がないオタクの備忘録

イノセント・デイズ





なにが、彼女をそうさせたのか
読み終わってずっと考えてる






細かい、伏線とも呼びにくいような小さな描写が
場面の端と端をつないでいく
自尊心とか、自己肯定感とか
そういったものをひとつも持たない彼女は
ただ、死が巡ってくるチャンスを待ち侘びる人になっていた







白ゆき姫殺人事件のようであり
白夜行幻夜のようでもある
どうしようもない星の元に生まれてきてしまったというか
周りが救い出そうとしても、
負のエネルギーの方が遥かに上回ってしまったというか
その人生は悲劇でしかなかった
彼女はひたすら愛に飢え、悪い人々に目をつけられ、
振り回される運命を辿ってしまった
彼女にはきっと、裁きを受けるという意識はなかっただろう
法廷での出来事は形式的なものと捉えていたのかもしれない
そして、慎一への微笑みは…...






人々の記憶の欠片を集めていけば、
そこには真実に近い田中幸乃の生涯が浮かび上がってくる
それでも報道は、世間は、真逆を行っていた
色んなものに虐げられてきた彼女の姿は
虚構によって覆い隠されてしまった
捜査が怨恨からスタートするのは普通だと思うし
本人が認めてるならその線でずっと進めるだろうとは思う
反省してない=残忍となるのも分からなくはない
ただやはり報道が、過激すぎたのだろう
キャッチーなニュースは何週間たっても
繰り返し取り上げられたりするし
そこに食いつく人たちもいるのは分かるけど
現実でそういうことが起こっても、
私は眉を顰めるタイプだから
その姿勢は本当に好きではない





自分と全く関係の無い人が犯人なのに
特にかばう意志があるわけではなく
ただそこにいれば死が訪れるから
それだけで田中幸乃は死刑を待っていた
それにしてもあの老婆の気持ちはよく分からない
出てきてひたすら不愉快だった





一歩、遅かった
もうあと一日早ければ、間に合ったかもしれないのに
それよりもっと早く彼女を救い出す方法はなかったのだろうか
罪を犯すよりもっと前に
彼女が祖母に引き取られるその時に
......幼い彼らには、それは無理なことだったのかもしれない



静かに動き続けた慎一は格好いいと思う
彼が翔に抱いた違和感、痛いほどよくわかった
確かに彼なりに向き合ってるんだけど、それは慎一と別の方を向いていた
うん、何というか......
向き合い方が足りないというか
みんな必死なんだけど、どこか一歩引いてるよなと思う
八田聡も翔も慎一も、救おうと動いてるんだけど
きちんと踏み込めてないからそう感じるのかな......
でも現実問題、そんなに動ききれないよな......





一番心に残っているのは
死ぬために生きる、その姿勢だった
ここで気を失ってはいけない
きちんと刑を執行されなければいけない
今までとは明らかに違う目的で息を整えていく姿が
その表情や決意までもが、はっきりと見えた気がした
美しささえ感じた




ただ、私は、彼女を救おうとすることは傲慢だと思う
もう誰からも裏切られたくないから
必要とされてもまた捨てられるその恐怖に
もう打ち勝つことは出来ないからと
あそこまで死に執着するのならば
救いの手を差し伸べることになんの意味もないと思う
翔と面会し、慎一の手紙を受け取り涙したのは
生きることへの渇望がうまれてしまったからではないか
心を動かされてしまったから
それからの一切を拒否したように見えた
彼女を救いたいという気持ちは分かるけど
それに共感はできなかった
だって、彼女は望んでいないから
信じてた、救いたかったという言葉は
とても薄ら寒く聞こえる

とにかく、他の人の感想を見て思ったのはこういうこと
私の考えは酷いだろうか、浅はかだろうか




私は読んでても田中幸乃が無罪になるとは思えなかった
周りがどう動いても、彼女の運命は変わらないと思ってた
だから救おうとすることに、信じるというその言葉に
白々しさを感じていたのかもしれない
逆に無罪放免とかになってたら、
面白くない小説だと思って投げ捨てた可能性はある
彼女は「田中幸乃」として死ぬために生まれてきた
みたいな部分もあるのかなと思った




多分この結末は俗にいうメリバ、なんだと思う
死にたがってた田中幸乃にとっては
死刑=幸福というのもありえる話
実際、薄く微笑んだ顔してたみたいだしね
彼女にとってそれが幸せなら
良かったんじゃないかなと思う




何でこんなに田中幸乃に寄り添うような
感想しか出てこないんだろうと思ったけど、
どこかで共鳴するような部分があるのかなと考えた
同化してしまうというか
彼女の背負う悲しみを擬似的にまとってる感覚になる
誰かに必要とされたいとか
恋人に依存してしまうその気持ちとかを
分かるような気になってしまったから
こういう感想になったのかな






帯には鮮烈に「読後は三日寝込みました」と書いてあったけど
そこまで衝撃的ではなかった
ただ鬱々とした気分になった
どれだけ言葉を尽くしてこの作品を語っても
薄っぺらにしかならない気がする




2018/06/05~06/07